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倉敷美観地区のまちあるき ひとの心と景観の関係

観龍寺から眺める美観地区

阿智神社から眺める倉敷駅方面

中村さん(手前右)の案内で美観地区を散策する、まちあるき参加者

 10月の当コラムで紹介した倉敷美観地区のまちあるき企画であったが、12月に入り、日本都市計画学会中四国支部の会員やまちづくり関係者の約30名が集まり開催された。中村泰典さん(NPO法人倉敷町家トラスト理事)は、あえて観光ルートから外れたものを紹介し、冬の寒さを感じながらも、景観保全の考え方や現状など熱のこもった説明をしてくれた。筆者も美観地区には時おり足を運ぶが、大原美術館や掘割を眺めたり、パンを買ったり、カフェをしたりなどのいわゆる観光目的であり、景観を考えるために訪れたのは初めてのことであった。

 中村さんの言葉で少し衝撃を受けたのは、「美観地区のモール化」という言葉である。おしゃれでおいしいお店が多いのだが、その土地に住み続けてきた人にとっては、新しいお店がオープンし、観光客が押し寄せ、買い物をする姿は、大型ショッピングセンターの光景に重なって見えるようだ。景観は保たれたとしても、人や店舗の変化は激しいということである。

 残される景観と変わりゆく景観が今回のテーマである。倉敷美観地区はそのような視点からも考えることもできる。今回のまちあるきでは、まず、観龍寺から古い街並みを眺めた。白壁や歴史的建造物など私たちの知っている美しい風景が広がっている。一方で、阿智神社の丘から倉敷駅方面を眺めてみると、新しいマンションなど、いわゆる日本の典型的な都市空間を確認できる。中村さんによれば、倉敷市中心市街地には新しいものと古いものの双方が存在しており、近年は、大正や昭和の時代に建てられた古い空き家が増えてきており、それらは取り壊しの対象になっているそうである。

 まちあるきの参加者と「次世代に残したいものは何か」について議論を行ったが、景観だけではなく、人の考え方や思想の継承も難しいという問題提起がなされた。確かに、まちづくりの先頭に立ってきた人々と、これから地域に関わろうとする若者の接点はあまり多くなく、人と景観の双方で断絶があることに納得した。

 倉敷美観地区のまちあるきを行ったが、何か問題解決に繋がったわけではない。しかし、どこかのまちで聞いた言葉が頭をよぎった。「たくさんの花が植えられている町は、花が好きな人が住んでいて、優しく、人を迎えてくれる」というものだ。都市の景観は、そのまちに住んでいる人の心を照らすということだ。倉敷美観地区は美しい風景をきっと残していくと筆者は思っている。なぜならば、このまちが好きだという人がいれば、その人が大切にしているものを残そうとするはずだからである。

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岩淵 泰(いわぶち・やすし) 岡山大地域総合研究センター(AGORA)助教。都市と大学によるまちづくり活動に取り組む。熊本大学修了(博士:公共政策)。フランス・ボルドー政治学院留学。カリフォルニア大学バークレー校都市地域開発研究所客員研究員を経て現職。1980年生まれ。

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