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「フラリーマン」に見る夫婦関係

仕事を終えても家に帰らず、フラフラしながら時間をつぶす。そんな「フラリーマン」が生まれる原因は、夫婦が積み上げてきた関係性から考える必要がありそうです

 NHKの報道番組「おはよう日本」で紹介されて以来、「フラリーマン」が話題になっています。仕事が早く終わっても帰ろうとせずフラフラしているサラリーマン夫を指す言葉のようです。なぜ帰らないのでしょう。原因はさまざまですが、早く帰っても迷惑になる、居場所がない、一人の時間が大事…と夫たちは主張。対する妻側は、許せない、ありえない、帰って来なくてもいい、その方が助かる、など。また、「夫に死んでほしい妻たち」という何とも恐ろしいタイトルの本が話題になっています。最近のネットのニュースでは、男性と女性のどちらが優遇されているか、そんな記事もありました。どれも夫(男)VS 妻(女)という描かれ方をしているようです。いつから夫や妻は互いの敵になったのでしょうか。そんなことを助長しているかのようにも見える内容にも疑問を感じているこの頃です。

 夫婦の関係は3タイプに大別できると考えます。この関係性は、二人の相互作用によって生じるものです。

 まずXタイプは、AがBに頼り、Bもそれを受け入れることでつながっている関係です。例えば夫が家事を妻に任せ、妻も家事を引き受ける場合です。この関係では、引き受け任されることによって妻は不満を感じるし、夫は家事をしないので家のことは何も分からない。そして妻なしでは何もできず妻に頼り続けるので、妻の負担と不満は増え続け、夫はもし妻が頼ることを拒否する場合には「どうしてしてくれないんだ」「やってくれないと困る」と不満を感じる。お互いにとって不満で不幸な関係と言えるでしょう。

 Yタイプは、AとBが一緒にいるけれど、精神的に影響し合わない関係です。同居人、夫婦の形をとっているけれども、精神的には関わっていない、ただ体裁のために、子供のためにつながっているような関係です。

 最後のZタイプは、AとBがお互いの利益のために助け合う関係です。こうしたつながりによって、二人が精神的に安定を得るだけでなく、成長が可能になります。積極的なコミュニケーションを通じて互いをいたわり、時に厳しい言葉を伝えたとしても互いの更なる相互理解に発展できるような関係性です。

 これらの関係性は元々、セラピストとクライエント(患者)の関係性を理解するための概念ですが、夫婦、教師と生徒などその他のさまざまな関係にも当てはめることが可能だと思います。いずれの関係でも、片方だけに原因があるのではなく、二人がその関係性を作り上げていると言えます。

 フラリーマンの場合、まっすぐ帰ってこない夫が悪くて、家事育児をこなす妻が大変という理解だけでなく、それまで積み上げてきた夫婦のプロセスの中で考えてもいいのではと思うのです。フラフラするのも、一見そんなに楽しそうにも思えませんでした。バッティングセンターへ行ったり、ゲームセンターに行ったり、積極的に時間を活用するというより、どこか自分の居場所を探しているようにも見受けられます。つまり、この場合の夫婦にとっては、帰ってきても帰ってこなくても、両者はそれぞれ不満でつらいという、Xタイプにあると言えるでしょう。

 他方、子供がいなくなって、夫婦で話すこともなく、妻が見ている韓国ドラマに文句を言うことになるから、寝静まったころに帰るためのフラリーマンであるならば、その夫婦の関係はYタイプかもしれません。

 フラリーマンの反響が大きかったようで、2回目の放送の時には、初回に登場したサラリーマンが、仕事が終わって妻と駅で待ち合わせ、夫婦一緒にピアノを習い、一緒に買い物をして食事をする姿が映し出されていました。これこそZタイプと言えるでしょう。私がかねてから主張しています、「女性の両立問題」から「夫婦の両立問題」に転換した良い一例だなあと思い拝聴していました。

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 小畑千晴(おばた・ちはる)徳島文理大学心理学科准教授。臨床心理士。武庫川女子大学大学院修了後、岡山大学男女共同参画室助教。ドメスティックバイオレンス、摂食障害、女性の両立問題などをテーマに研究を行う。勤務先が徳島のため、岡山市在住の家族とは週末生活を送る。1973年岐阜県生まれ。

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