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ホランドの六角形 職業的満足を得るために

ホランドの六角形は自分の適性を知る手段となる

 2020年の東京オリンピックに向けて多くの自治体が、小中学生を対象に世界的に活躍できる未来のアスリートの発掘に力を入れています。応募の中から選抜試験に合格した子供たちを対象に様々なトライアルに取り組んでもらい、その子供たちそれぞれに、最も適合した競技を科学的に探し出すというものです。中学時代からしていたサッカーでは今以上の成績は出せないが、陸上の世界に行けば世界の舞台に立てるかもしれない。そんな適性をはっきりとデータで見せて、数あるスポーツの中から自分に最も合った競技を選ばせるというシステムです。

 こう書くとなんとなく味気なくも思えますが、スポーツ界で世界的に活躍したいと思うのであれば、それぞれの個人のポテンシャルや適性にあった競技を選んだ方が、好き嫌いだけで選ぶよりも効率的ということなのです。中にはどうしてもサッカーがしたいという子供がいた場合、サッカーだと将来的に不確定という判定。しかしながら陸上ならオリンピックに行ける可能性が高いという判定。好きを取るのか、少ない可能性にかけるのか子供達にとっては酷な選択には違いありませんね。

 先日、フィギュアスケートのオリンピックメダリスト高橋大輔選手を育てた先生にお話をうかがいました。少しおとなしい子供だった彼を、お母さんがアイスホッケーをさせればもう少し活発な子になるのではないかと思いスケートリンクに連れて来たそうです。そうすると、激しいアイスホッケーは嫌だけど、隣で練習していたフィギアスケートならやりたいと言って、スケートを始めたそうです。偶然の出会いからオリンピックのメダリストが生まれたんですね。これからはこんな偶然からオリンピアンが生まれることは少なくなりそうですね。

 実は、職業選択にも科学的に個人それぞれの適性と職業類型を見定めて、個々にあった職業を見つけることはできないかと考え、職業選択理論を打ち立てた人がいます。ジョン・ホランドです。ホランドはウエスタンリザーブ大学で心理学を教えながら職業カウンセラーをして、のちに復員兵の病院でもカウンセラーをし、ジョンズ・ホプキンス大学などでも教鞭をとりながら職業カウンセラーとして生の声を集約し「実践する人の役に立つ理論」を目標に研究を続け、「職業選択の理論」を発表しました。

 皆さんも就職試験の時などに受けたことがあるかもしれませんね。VPI(Vocational Preference Inventory)職業興味検査や、DOT(Dictionary of Occupation Titles)職業辞典、VRT(Vocational Readiness Test)職業レディネステストなどを開発したのもホランドなんです。彼はこれらのテストを開発し、個人が自分の行動傾向を把握するとともに、それに対応できるタイプの職業や活動、生活環境を探せるように援助するカウンセリングを提唱しました。

 ホランドがシンプルに表現しているものに「ホランドの六角形」というのがあります。ホランドは環境も個人も六つの類型に分類できると考えました。そしてそれぞれの性格特性とマッチングする環境で仕事をすることが、長く安定した職業選択につながり、高い職業的な満足を得ることができると説いています。

 六つの性格タイプとは。①現実的(Realistic) ②研究的(Investigative) ③芸術的(Artistic) ④社会的(Social) ⑤企業的(Enterprising) ⑥慣習的(Conventional)です。大多数の人はこの中のひとつにあてはまるそうです。六角形上にR-I-A-S-E-Cと時計回りに六つの性格タイプの頭文字を配置しています。図にするとこうなります。


 
 要するに性格タイプが、①現実的な人は、飛行機など物体を対象とする具体的で実際的な職業を好み、航空会社の整備士や電車のエンジニアなどの職につけたら、高い職業的な満足を得ることができるということです。②の研究的な人は研究や調査などの探索的な、科学系の研究者、医師など。③の芸術的な人は音楽、芸術的な仕事を好むので、デザイナーや作家など。④の社会的な人は、人と接するなど社会的な仕事を好むので、ケースワーカーやデパートの販売員など。⑤の企業的な人は、企画や組織運営などの仕事を好み、かつ野心的なところがあるので企業の管理職など。そして⑥の慣習的な人は、定まった方式や規則に従い、反復的な仕事を好むので、経理や電話オペレーターなど、となります。

 まずは自分がどのタイプの人間なのかを知ることが大切であり、自分の特性がわかれば、せっかく就職しても、精神的に疲れてしまって離職し、人生を台無しにしてしまうようなリスクは軽減されるかもしれませんね。特に、この六角形で見て、本当の自分はR、すなわち現実的なのについた環境(会社での仕事)がS、すなわち社会的だったりしたら短い期間であればもちこたえられるかもしれませんが、長い期間で大きな喜びは得られないであろうということでもあるのです。すなわち、自分の特性と真逆の選択をしてしまうと、自分の興味関心を満たしてくれる事が仕事において全くないという状況になってしまう恐れがあるということなのです。

 このホランドの六角形に関して、ぜひとも高校生や大学生の若いうちに一度テストを通して触れてもらいたいと思います。以前紹介した、シャインの「キャリア・アンカー」(個人のキャリアの定着要因、どうしても譲れない職業に関しての価値観)はどちらかというと、社会人になってある程度組織の中で経験を積んだ人が調べた方が実感として理解しやすいと私は思っています。大学でも、1年生のうちに、個々の、自身の性格的特性やタイプを知っておこうと、キャリアデザインの授業でVPIなどを利用してホランドの六角形について触れるようにしています。

 この理論を知って周りを見てみると面白いことに改めて気づくのです。それは、私は30年近くマスコミの世界にいますが、長く私の周りにいるマスコミの世界で働く人たちは似たようなパーソナリティー特性を持っているということです。逆で言えば、早くマスコミの世界から去ってしまった、いや、嫌気がさした人たちは(少し自虐的に)私とは違ったパーソナリティー特性だったのだなと実感するのです。

 スポーツの世界ではありませんが、若いうちから自分の特性を知っていることは決して無駄にはならないと思います。最後に決断するのは、あなた本人なのですから。ちなみに、実際に自分はどのタイプなのか、VPI検査を受けて調べたいという人は、大学生なら学内のキャリアセンターに行けば詳しく教えてくれます。

 ◇

多賀 公人(たが・きみと) コミュニケーションコンサルタント。瀬戸内海放送でアナウンサー兼プロデューサーとして28年務めた後、ユイ・コミュニケーション・ラボ(株)を設立。企業・団体を対象に映像を使ったコミュニケーション研修トレーナーや、商品PR・ブランド広報戦略のコンサルタントとして活躍中。現在も瀬戸内海放送や山陽放送でキャスター兼コメンテーターとしてレギュラー多数。プロゴルファー石川遼選手の「ハニカミ王子」の名付け親でもある。1963年玉野市生まれ。
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