文字

お酒造って棚田を守る 昔ながらの収穫そして醸造

上山棚田で収穫した米で造った日本酒「㐂(き)」

櫨(はぜ)干しの景色

収穫後に笑顔で記念写真に収まる上山集楽のメンバー

紅葉もいまが見頃。ぜひコムスで上山集楽にお越しください

【表】日本酒の分類

日本酒の分類

このPDFを表示

 棚田再生活動10年目の稲刈りが終了しました。美作市上山地区には日本中探してもどこにもない櫨(はぜ)干しの景色が広がっています。2015年、約25年ぶりに復活させた上山地区内八伏(はちふせ)の棚田の櫨干し。今年は3年目の作付けでした。今年の夏は天気が良かったのですが、秋からの台風などの影響で稲刈り自体が遅れてしまいました。田んぼがぬかるんでいてバインダー(稲を刈って束ねる機械)が入れないことが多く、さらに風で稲が倒れてしまい、手作業で刈り取りを進めることが多かったです。時間と手間がかかっていましたが、なんとか今年も櫨干しが完成しました!

 写真のこの景色は【日本中どこにでもあったけど、いま日本中どこにもない景色】なのです。上山集楽では棚田の稲を手で刈り、稲わらで括(くく)り、竿と脚を手で運び、1束1束丁寧に櫨干しすることを通して40年前、いや100年前の人とほぼ同じことをしているのだと感じます。このような手作業の仕事は、非効率的のように見えますが、非効率なことをすることで昔の日本人はどのように暮らしてきたのかを考えながら稲刈りを行ってきました。

 大切に作ったお米。だから、全部味わってほしい。
 
 この棚田を中心にできたお米(酒米である山田錦)は、高梁市にある白菊酒造にて生酛(きもと)仕込みでお酒に変わります。お米約20俵(1200キロ)が一升瓶にして1000本分のお酒になります。生酛仕込みとは、乳酸が入手できなかった明治時代以前に行われていた昔ながらの日本酒造りの方法です。酒蔵の酵母などを生かす、手間暇かけて造り込むお酒づくりのことです。

 ところで、みなさんは日本酒の区別をご存知でしょうか? 日本酒を種類ごとに区別するとのようになります。現在、日本酒を区別する評価ポイントは2点あります。「醸造アルコール」と「精米歩合(せいまいぶあい)」です。醸造アルコールとはサトウキビなどを原料にした蒸留酒で、純度が高く無味無臭なものです。日本酒を造る過程で添加されているものがあります。こちらを添加せず、米、米麹、水だけで作るのが純米酒です。また、精米歩合とは米を削った後に残った酒米を%で表示したものです。精米歩合が高い(数値が低い)ほど、すっきりした味わいになると言われています。

 お米は外側に近い部分に脂質やアミノ酸などを多く含んでおり、これらは旨(うま)みのもととなる半面、雑味の原因ともなります。そこで澄んだ酒質にするため、お米の外側を削るのが精米です。精米歩合35%とは、65%を削って残りの35%を原料にしたという意味です。一般的に精米歩合を高くする(削る部分を多くする)と、香り高くすっきりとした酒質になり、低くすると濃厚な味わいのお酒になります。
棚田のお米は先ほど紹介したように棚田で育ち、風雨にさらされ、手作業で櫨干しをしてゆっくり乾燥させてできあがっています。そのお米をなるべく削りたくありません。棚田米を可能な限り削らずにおいしいお酒づくりができないかチャレンジしようと始まったお酒づくりになります。白菊酒蔵で生酛仕込みして作られるお酒は「純米酒」と区分されますが、杜氏さんも納得の味に仕上がりました。

 ここでお酒の価値の基準が、精米歩合や醸造アルコールが入っているかどうかだけではないことが多少は伝わったでしょうか? お米づくりする場所、お米の作り方からお酒の仕込み方まで含めた日本酒づくりはとても奥が深く、「精米歩合が高いお酒だけが高級ではない」という常識は私自身もお酒づくりを通して初めて知ることができました。

 お酒づくりに関わりたい方を募り、出資者として日本酒でお返しする。

 上山棚田の日本酒は「㐂(き)」というブランドで作りました。精米歩合も「七」を三つ合わせた77.7%です。「㐂」とは喜びやめでたい様を表し、出資していただいた方には基本的に50本ずつ喜びの清酒が届けられます。さらに出資者が増えれば口数も増やせ、口数が増えれば田んぼが守れる。さらに田んぼを増やして棚田の景観や地域を維持することもできる。今年のお米でも、そんな期待を込めたお酒づくりが進みます。

 今回はできたお米がどのようなお酒になるか、その解説をいたしました。上山棚田の現在の稲刈りが終わり脱穀の最中です。櫨干しの見ごろは11月前半~中旬になります。2週間ほど限定の櫨干しの景色をぜひご覧いただきたいです。

 引き続き、上山集楽にお越しの際はコムスに乗って棚田の景色を楽しんでいただけたら幸いです。詳しくはこちらから



梅谷真慈(うめたに・まさし) 奈良県出身。1986年生まれ。2011年、岡山大学大学院環境学研究科修了後、SNSをきっかけに関わりを持った美作市・上山地区に移住。棚田再生に取り組むNPO法人英田上山棚田団の理事を務めている。棚田団の活動は13年、日本ユネスコ協会連盟による「プロジェクト未来遺産」に登録、16年には農林水産物や景観などを生かした地域活性化の成功事例「ディスカバー 農山漁村(むら)の宝」(内閣官房など主催)に選ばれた。棚田団のホームページ(http://tanadadan.org/)でも発信中。

【英田上山棚田団通信】の最新記事

ページトップへ

ページトップへ

facebook twitter rss

▼山陽新聞社運営サイト
さんデジタウンナビ | 岡山の医療健康ガイド | マイベストプロ岡山 | 47CLUB | さん太クラブ | おかやまリフォームWEB | LaLa Okayama
山陽新聞カルチャープラザ | 建てる倶楽部 | 山陽新聞進学ガイド | 山陽新聞プレミアム倶楽部 | まいられぇ岡山 | 囲碁サロン
▼関連サイト
47NEWS | 今日のニッポン
掲載の記事・写真及び、図版などの無断転記を禁じます。すべての著作権は山陽新聞社、共同通信社、寄稿者に帰属します。

Copyright © The Sanyo Shimbun. All Rights Reserved.