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貫禄なんていらない 嘉門タツオさんの生き方に学ぶ

総社市で嘉門タツオさん(右)とツーショット

 仕事柄多くの芸能人や有名人の方々にお会いするチャンスをいただきます。根がミーハーな私は有名な方が大好きです。どうしてなのかは分かりません。テレビが大好きで、テレビに出ている人に憧れを小さな時から持っていました。テレビに出るようになってからも、その有名人好きは変わりません。

 最近だけでも、シンガーソングライターの八神純子さん、お笑いのナイツのお二人。スケートの本田望結ちゃんに、女優の高梨臨さん、松下奈緒さんら錚々たるメンバーと対談やインタビューをさせてもらいました。もちろんお仕事ですから、インタビューや対談が終わるとお別れですが、仕事が縁で、中には何十年にもわたって、良き先輩、良き仲間としてのお付き合いが始まる人もいます。本当に多くの有名人、芸能人、スポーツ選手そして有名経営者の方々などと対談や企画番組でご一緒させていただいているので、いつかそれぞれの方々から受けた薫陶などもつづっていきたいと思います。

 今回は仕事で出会ってから、かれこれ20年以上もお付き合いしていただいている方からもらった「人生のキーワード」です。勝手に兄貴と慕っている方です。その方は替え歌の帝王と言われるシンガーソングライターの嘉門タツオさんです。「鼻から牛乳」や「アホが見るブタのケツ」など思わず、あるある、そうそうと吹き出してしまうヒット曲がいっぱいです。紅白にも出演している、私から見たら、ある意味芸能界の大御所です。

 嘉門さんははじめ、笑福亭鶴光さんに弟子入りし、笑福亭笑光という名前ももらっていましたが、破門され、放浪に出ました。その後にシンガーソングライターとしてデビューしたというユニークな経歴の持ち主です。嘉門という芸名はあのサザンオールスターズの桑田佳祐さんからいただいたということも有名ですが、その人的ネットワークも桑田さんから名前をもらうぐらいですから相当なものです。

 私との付き合いは、20年以上になります。温泉好きという共通点もあり、岡山では桃太郎温泉などに一緒に行ったりもしました。嘉門さんの結婚式にも呼んでいただきました。その結婚式では、谷村新司さんが「すばる」を熱唱していました。私の席の向こう側には、上岡龍太郎さん、あのねのね、押尾コータローさんらがいらっしゃいました。緊張しました。

 最近では11月12日に総社市の商工会議所が主導している「パンの街総社」のイベントでご一緒しました。総社は岡山県一のパンの生産量で、商工会議所が音頭をとって美味しくてユニークなパンを、街のパン店が協力して生産しています。週末には売り切れるお店もあるほど人気なんですよ。その総社がパンの街総社をPRしていることが日本記念日協会に認められ、11月6日は「パンわ〜るどの日」に認定されたことをお祝いするイベントでご一緒しました。というよりも、私がお願いして来てもらい、パンの街総社の歌まで作っていただきました。

 そんな嘉門さんが今年58歳になったことをきっかけに、名前の表記を嘉門達夫から嘉門タツオに変えたんです。ホームページなどには「還暦を目前にして、さらに貫禄をなくそうと思ってカタカナにした」「これでこのまま生涯現役でフットワーク軽く進んでいける」とあります。私も直接聞いたのですが、「多賀ちゃん、人生を本当に楽しめるのは60過ぎてからやデェ〜」と、60過ぎてからこそ、貫禄をなくし、新人の時の気持ちでいることで、生涯人が喜ぶ歌を歌い続けていけると言ったのです。

 「この貫禄をなくそう」というくだりが私の胸に刺さりました。私などは、無理してでも貫禄を出そう、アナウンサーとしての貫禄をと、背伸びするタイプでしたが、嘉門さんは違ったんです。貫禄を辞書で調べると「体つきや態度などから感じる人間的重みや風格、身に備わった威厳」などとあります。しかし、太った人に貫禄が出て来たねと皮肉って言うこともありますね。また女性に向かって貫禄があるなどとはあまり言いませんよね。

 私自身は貫禄という言葉はポジティブに受けとめていて、なんとか貫禄を出そうとしていましたが、考えてみると、成功した方々は総じて、貫禄というよりは、にじみ出る人柄というか、人を寄せ付けない威厳というよりは、ウェルカムな姿勢の方が印象に残っているのです。ことわざにも「実るほど頭を垂れる稲穂かな」とあるように、本当に成功した人たちというのは、威張らないで、謙虚で、笑顔で人と接することができる人たちなのではないのかなと思うのです。改めて、自分が出会ってきた方々を思い返してもそうでした。

 ある経営者の方と名刺を交換した時に、名刺に雑用係と書いてありました。えっ、と思ったらその場にいた知り合いが、「社長だからこんな名刺も作れるんだよ」と笑っていました。企業のトップに上りつめても、相手を緊張させない気配り、シャレやユーモアを忘れないとうことも教えてもらったように思います。芸能界という特殊な世界ではありますが、嘉門さんも、きっとそんな、誰もがクスッと笑ってくれること、いつまでも人が笑顔で寄って来てくれることを期待して、改名したのだろうと思います。貫禄なんていらないと言える人とは、経験と実績を積んで、肩書きや、世間の評価を気にしないで、他人になんと言われようとも揺るぎのない自信を持てるようになった人。そんな人だけが言える言葉なんでしょうね。

 アナウンサーを30年も続けていると、若手や仲間たちに、今更聞けない、なんてことが増えて来ます。そんな時にも、たとえ自分よりも若い人たちが相手でも、教えを乞う、謙虚な気持ちで、初心に帰る、折に触れてそのことを忘れないようにしたいと思います。

 さらに、「60歳からの人生が楽しみやわ〜」と嘉門さん。私なんぞは、会社を辞め独立した時に、なんとかみんなが定年を迎える60歳までに、最低限の蓄えを、60歳を過ぎたらのんびりと、と考えていたタイプでした。人生100年と言われる今日この頃、60歳は単なる通過点。「60歳からの人生が楽しみやわ〜」と私も心から思えるように頑張りたいと思います。

 ◇

多賀 公人(たが・きみと) コミュニケーションコンサルタント。瀬戸内海放送でアナウンサー兼プロデューサーとして28年務めた後、ユイ・コミュニケーション・ラボ(株)を設立。企業・団体を対象に映像を使ったコミュニケーション研修トレーナーや、商品PR・ブランド広報戦略のコンサルタントとして活躍中。現在も瀬戸内海放送や山陽放送でキャスター兼コメンテーターとしてレギュラー多数。プロゴルファー石川遼選手の「ハニカミ王子」の名付け親でもある。1963年玉野市生まれ。
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