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室戸台風の猛威、遺物から学んで 岡山理科大などが保存・展示検討

ほうろう看板の保存処理を進める岡山理科大生=2017年1月(県立博物館提供)

室戸台風で捨てられた生活遺物をチェックする野田学芸員

 83年前の9月21日、岡山県内に甚大な被害をもたらした室戸台風で廃棄された生活遺物を、災害の猛威を伝える“証人”として活用しようと、岡山理科大(岡山市北区理大町)と県立博物館(同後楽園)が保存処理や展示の検討を進めている。東日本大震災被災地で震災遺構の継承が注目される中、自然災害が少ない岡山でも「遺物から過去の教訓を学び、備えについて考える契機になれば」と関係者は話している。

 遺物は、ほうろう看板をはじめビールやインクの瓶、陶製の器や人形など。2003年に県教委が県総合グラウンド(同いずみ町)で行った津島遺跡の発掘調査で、室戸台風の際に捨てられたがれきや生活用品が大量に埋められているのが見つかり、その一部約400点を県立博物館で保管。同年に一度展示されたが、以降は収蔵庫で眠っていた。

 この遺物に注目したのが、富岡直人・岡山理科大教授(環境考古学)。東日本大震災で壊滅的な津波被害を受けた岩手県陸前高田市立博物館の動物標本の修復に協力し、被災直後から学生と標本の洗浄やデータベース化を行っている。

 被災地では、津波で多数の児童が亡くなった小学校の保存計画などが進む一方、震災遺構は徐々に失われ、災害の教訓をいかに継承するかが議論されている。富岡教授らは「岡山は災害が少ないといわれるが、室戸台風で大被害を受けている。危機意識を持ってもらう方法はないか」と思案。遺物を活用した共同研究を県立博物館に打診し、2年前に学生と着手した。

 これまでに、さびが目立つ看板約30枚の保存処理を手掛け、標本修復のノウハウを生かして洗浄と樹脂を使った表面加工を進めている。併せて看板や容器の記載住所、店名を手掛かりに岡山市中心部の商店街などを訪ね、被害範囲を示す文献や証言との整合性を確認。調査成果は昨秋の学園祭で展示した。

 一連の作業に取り組んだ履修生の江川達也さん(27)は「身長より高い水位の洪水が襲ったなど、岡山でも大災害が起きることが実感できた。過去を知っておけば防げることが必ずある」。

 県立博物館は10月、大阪市である被災文化財を主要テーマにした学会で、理科大との研究を報告。来夏には15年ぶりの展示も計画する。同館の野田繭子学芸員は「被災の実情はもちろん当時の暮らしも知る貴重な資料。保存を決断した当時の関係者の思いに応えるためにも後世に継承したい」と話す。

 室戸台風 1934年9月に高知県室戸岬付近に上陸した超大型台風。国土交通省岡山河川事務所によると、岡山県内の被害は死者145人、全壊家屋3417戸、床上・床下浸水家屋4万6131戸。岡山市内では旭川や百間川が決壊して大洪水が起きた。
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