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復活6年目の上山集楽夏祭り 「もう一度したい」を実現

300人ほどが訪れた上山集楽夏祭り=8月11日

囲炉裏を囲んだサロンの場。祭りの映像を見て、復活への動きが始まった=2012年1月

日々の草刈りではいろいろな発見がある

いまの棚田の様子。青々とした稲穂と青空のコントラストがきれい

 毎日どんどんと成長してくる草と付き合う地道な日々の中、8月中旬、参加者みんなでつくる上山集楽夏祭りを行いました。今回は美作市上山地区の草刈りで感じる日々の生活、魔よけの伝統行事、復活して6年目になる夏祭りの様子を紹介します。

草刈りは住民の話題作りにも

 稲はそろそろ穂が出てきて秋へ向かっていくことも実感します。7~8月のお米づくりは地道な日々が続きます。なるべく朝早く起きて、日が昇らないうちにひたすら草刈りや草取りの日が例年通り続きます。

 棚田に暮らして毎日田んぼを見る、草刈りをする、草取りをする、草が伸びていくのを目にすると、毎日発見があります。遠くから見ると変化がないように見えますが、ジッーと観察することが大切です。去年と違う草が生えていたり、稲穂が出てくる時季が多少前後していたり、サワガニが増えていたり、クモが増えていたり…いろいろと変化があるものです。これは耕作放棄された棚田では目にすることができない光景です。棚田のあぜに生える草たちも不思議なもので、耕作放棄された状態から再生し維持管理する年月がたちますと、生えている草が変わってきます。

 ではなぜ草を刈るのかということも考えたことはありますでしょうか? 上山棚田で草刈りをすると、(1)景観をよくする(2)地域の方々との会話のネタになる(3)カメムシなどの害虫を遠のける(4)マムシがいても見つけることができる(5)田んぼ周囲からの風通しを良くする-などが挙げられます。

 特に(2)は重要です。移住してきた私のような若者は、地域の方と話をする話題がはじめは乏しいからです。草刈りをすることで地域の方々が長年暮らしながら積み上げてきた苦労の一端も感じつつ、会話を切り出すネタになります。草刈りは田舎に暮らすには必要不可欠な作業で、日々成長する草に付き合いながら私たちも地道に汗をかいています。

魔よけの伝統祭事

 さて、ジリジリと暑い夏の節目に、今年も7月23日に上山神社で昔から続く夏祈祷(きとう)の祭事もありました。上山神社は上山棚田の水源である大芦池を創ったといわれる大芦仲彦命が祭られています。境内に入る前に茅の輪くぐりをして、神社に参拝します。上山では「このチガヤの輪を左足から入ってくぐると悪霊、悪魔よけをしてくれる」といわれています。

 暑い夏を迎えようとする時季に、病気などをせずに夏の暑さを乗り越えられるようにと、無病息災を願うために行われる行事です。昔、夏は伝染病がはびこる時季で、ただただ神仏にすがり、死から逃れることしかできなかった時代もあったことを今に伝えています。

 この日は、神社から人をかたどった紙が氏子である上山住民に配られます。紙には家族みんなの名前・性別・年齢を書き、それを床の下に敷いて寝ます。上山神社における夏祈祷では、その人型の紙に自分の体の悪いところへ息を吹きかけ体をさすったり、自分の身についているもろもろのけがれをこの紙に移したりして神社へ行きます。茅の輪をくぐり、紙を奉納する祓いの式が終わると、谷川へ流しています。このような地域の伝統行事の意味も、街にいたら全く意識することがなかったですが、移住してお米づくりをしていると、神社の成り立ち~お米づくりのある暮らし~節目にある祭事が繋がって、暮らしにまつわる一つ一つのことが意味のある存在になってきています。

復活の声実現した夏祭り

 そして復活させてから6年目の上山集楽夏祭りを8月11日に開催しました。当日は300人ほどのお客様にお越しいただきました。本当にありがとうございました。上山地域の住民は150人強なので、参加者数が人口の約2倍ということに驚きです。今年も「東北を、日本を、花火で、元気に。」をスローガンに、東日本大震災被災地の太平洋沿岸十数カ所で花火を一斉に打ち上げている「LIGHT UP NIPPON」の活動に賛同し、上山でも花火が上がりました。

 この夏祭りは、ただ単に夏の楽しみをつくりたいということで復活したわけではないのです。地域の皆さんと2012年2月の寒い中、地区内にある古民家いちょう庵に集まって月に1回のサロンをしていたときのことです。そのサロンで上山の昔の映像をスクリーン囲んで見ていたら昔の祭りの映像が出てきました。「もう一度祭りができたらええなぁ」「それなら復活させましょう」。住民がこぼした言葉を、移住者が拾ったことから始まりました。そうやって村人の有志が集まって、夏場のバタバタする時季ですが、声を掛け合って祭りの運営に取り組んでいます。夏祭りは一度廃れてしまいましたが、昔ながらの良さも残しつつ、新しい楽しみも盛り込みながら継続できるようにしていきます。

 引き続き、上山集楽にお越しの際はコムスに乗って棚田の景色を楽しんでいただけたら幸いです。詳しくはこちらから



梅谷真慈(うめたに・まさし) 奈良県出身。1986年生まれ。2011年、岡山大学大学院環境学研究科修了後、SNSをきっかけに関わりを持った美作市・上山地区に移住。棚田再生に取り組むNPO法人英田上山棚田団の理事を務めている。棚田団の活動は13年、日本ユネスコ協会連盟による「プロジェクト未来遺産」に登録、16年には農林水産物や景観などを生かした地域活性化の成功事例「ディスカバー 農山漁村(むら)の宝」(内閣官房など主催)に選ばれた。棚田団のホームページ(http://tanadadan.org/)でも発信中。

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