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テレビドラマロケのお話 『サヨナラ・キネマ』『がんばれ!ホワイトピーチーズ』

「がんばれ!ホワイトピーチーズ」の撮影風景

今となっては貴重!「SakuLoveサクラブ」のみなさんのサイン

 2013年9月の夕方、奉還町商店街にある「シネマコレクターズショップ映画の冒険」で、テレビせとうち制作の美作国建国1300年記念ドラマ『サヨナラ・キネマ』(山本淳一監督)の撮影が行われた。

 その撮影を楽しみにしていたのだが、運悪く、その日は、映画『たとえば檸檬』『戦争と一人の女』のシネマクレール舞台挨拶で来岡された、女優の有森也実さん、俳優の村上淳さん、片嶋一貴監督、井上淳一監督らと行動を共にする日と重なってしまった。

 ドラマ制作スタッフのSさんとは親しい仲だし、困ることは何もないので、店の鍵を預けて好き勝手にやってもらった。このドラマの山本淳一監督とSさんは映像専門学校の同級生。ロケ場所決定のちょっと前に2人で来店。山本監督には、特撮系、アメコミ系のフィギュアや、カンフー映画のポスターなどをたくさん購入していただいた。

 この時にロケハンを兼ねていたわけですな。おまけをいっぱい付けさせてもらったのがよかったのかしら。

 この原稿を書くに当たって、4年ぶりに見直したら、当時は気が付かなかった突っ込みどころ満載の、ローカル局制作のドラマとは思えない、はじけ飛んだ作品になっていた。

 津山の5人組アイドルグループSakuLoveサクラブ(現在は残念ながら解散している)を主演にした、津山を中心にした県北ローカル青春ドラマだ。

 映画館のない町(津山市?)の中学校映画部の女の子たち(男の子はいない)が、「大きなスクリーンで自分たちの映画をみんなに観てもらいたい!」ということで、発表会を目指して映画を作る。その過程で、ヒロイン探しや、部員たちの確執と友情、部長の母親の死などのエピソードなどが盛り込まれていく。

 ホラー映画大好き部長が書いた脚本のタイトルは、『情け無用のヘルゾンビ』。私もタイトルだけは知っていた、最も残虐なマカロニウエスタンと言われているトーマス・ミリアン主演『情無用のジャンゴ』(1967)へのオマージュになっているのは分かるけど、およそ女子中学生が考え付くタイトルじゃないぞ。まあ、そこがよいのだけどね。

 部長の家族でホラー映画を見ているシーンや、部員が参考DVDを見ているシーンの劇中に現れるゾンビが、実に良く出来ている。それもそのはず、特殊メイクスタッフにホラー劇場作品を手がけている千葉美生さんが参加。完成度の高いゾンビが出演。ドラマ中にも、「ゾンビは走ったらダメ」「地面から這い出て出てこそゾンビ」といったディープな会話があったり、映画部が作った前作のタイトルが『殺人カンフー大激殺』(ブルース・リーの『死亡遊戯』のパロディ)だったり、部室に飾ってあるポスターが『ロボコップ』(うちの店からのレンタル)だったりで、山本監督のこだわりと映画愛が炸裂(さくれつ)。

 「映画の冒険」が出てくるシーンは二つある。最初は、ゾンビ映画には必要不可欠の絶叫ヒロインを誰にすればよいか、部員たちが店長に相談しに来るというシーン。何と、「吉富店長」役は温水洋一さん。光栄にも、エンドクレジットに役名を入れていただいた。

 私と頭髪の具合が似ているということで、店長役に温水さんをキャスティングした訳ではなく、何人かの候補の中で、奇跡的にこの日が空いていたのが温水さんだったということらしいが、私にとっては最高のキャスティングだ。

 ご存知「ぬっくん」こと温水洋一さんは、意外にも現在53歳。1990年のテレビドラマでデビュー以来、映画、舞台と膨大な本数に出演。デビュー当初は、怪しい危険な人の役が多かった印象があるが、頭髪が薄くなってからは、ショーン・コネリー、竹中直人と同様、好感度アップで、ますます魅力的な俳優になってきた。

 その温水さんが、雑然と商品が積まれているカウンターの中で、「吉富店長」を演じられているのだから、感無量としか言いようがない。孫の代まで自慢出来るぞ。

 2番目は、部長との確執で、気落ちした部員たちが商店街をトボトボ歩いていて、店の前でポストカードの整理をしている温水さんが、部員たちに声をかける、というシーン。ここでの温水さんと映画スポンサー役のワニ完才さんとのやりとりがいい。

 「映画の現場には、いろいろとあるんですよ! ちょっとは空気読んでくださいよ!」とワニさん。「いろいろあって、いろんなことが起こるのが映画の現場ってことなんだよ。ガンバ!」と温水さん。

 ドラマ経験の少ないキャストが大半の中で、温水さんが登場するシーンは、ピリッと画面が引き締まる。さすがだ。

 制作のSさんによれば、「ゴジラ」コーナーで、ご自身が出演されている金子修介監督『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』(2001)のパンフレットを見つけ出して、うれしそうにご自分のシーン写真にサインをしていたそうだ。ちなみにそのシーンとは、トイレで小用を足していると、ゴジラが現れ、そのまま踏み潰されるという、とっても切なくて笑える役得なシーンなのです。サインをしていただいたパンフレットは大切に店のショーケースに保管しています。

 今回、お会いすることが出来ないと諦めていたところ、偶然にも、前述の有森也実さんたちを出迎えに行った岡山空港ロビーで、同じ便に乗っていた温水さんに遭遇。「うちの店を使っていただくんです。映画グッズの店です。本物の店長です」と名刺を渡して挨拶できたのは、本当にラッキーだった。

 2013年10月14日の放送後は、SakuLoveサクラブのファンの方々が津山から何人か来店された。店の写真を撮ったり、ロケのことを色々と質問されるが、現場に立ち合っていないので、ディープな会話が出来ず、残念だった。

 ところで、ゾンビについていろいろと記したけど、私自身はホラー、ゾンビ、残酷ものは、全くダメ。東映のヤクザもので、指をツメルだけでもダメ。『エクソシスト』(1973)『サスペリア』(1977)『オーメン』(1976)『悪魔の沼』(1977)ぐらいは、観てますけど。

 次のドラマロケは、2015年10月、テレビせとうち開局30周年記念ドラマ『がんばれ!ホワイトピーチーズ』。南明奈さん扮するキャバ嬢が、弱小少年野球チームの監督になる、という荒唐無稽なお話し。里見要次郎さん、鼠先輩のご当地タレントも特別出演。

 監督は『サヨナラ・キネマ』と同じく山本淳一監督。山本監督にとっては、前年の大病からの復帰作なので、やる気満々。

 その野球チームのメンバーに鈴木福くんがキャスティングされると聞いて、早速、福くんの主演映画『コドモ警察』のパンフレットを入手。もちろんサインをもらうため。福くんの大好きな「仮面ライダー」のガチャポンをいっぱい詰め込んだプレゼントも用意。そして、奉還町ロケ終了を見計らって、小学生にサインのお願いは、ちょっと抵抗があったけど、勇気を出してお願いすると。

 「すみません、サインは1人1枚でお願いします。」と、色紙へのサインは丁重に断られた。さすがの大人対応に、オジサンがっかり。しっかりしてるなあ。

 うちの店は、野球チームのメンバーの小学生の女の子の自宅という設定。「シネマコレクターズショップ映画の冒険」は、そのままで、2代目「吉富店長」は、山本組の常連の怪優・ワニ完才さん。つるつるの坊主頭。私への嫌がらせっぽいぞ。また、2人の可愛い女の子のお父さんという設定には、ちょっと無理ありかな。

 店長と次女は、黒地に白文字の「映画の冒険」Tシャツを着ている。それにしても、スポンサーでも何でもないのに、こんなに目立ってしまって、良いのかしら。申し訳ないばかりです。

 その日は、店頭でのロケも行われた。うちの店の中から、ドア越しに見える通行人役で、急きょエキストラをやるはめに。迫真の演技は、カットされることなく無事に使われていた。アットホームな雰囲気の、楽しいロケ現場だった。

 放送は2015年12月20日の午後2時。当日、テレビせとうち本社で、スタッフ、キャストが集合して観賞するという、ステキな企画が催された。子役の皆さんの中には、県外組も。このイベントへの参加前に、うちの店に皆さん立ち寄っていただき、記念撮影もしていただいた。

 その日、大人だけの忘年会を兼ねた打ち上げがある、ということで招待されたのだが、「いつどこで?」と聞いても返事がない。前日になっても何も決まっていない状況にびっくり。結局、スタッフでも何でもない私が、普段からご贔屓(ひいき)にしている「西口・飛鳥」さんをなんとかキープして、開催にこぎつけた。

 こんなゆる~い山本組の皆さんと、また、ドラマか映画でご一緒できる日が来るのを心から楽しみにしています。

 それはそうと、突然来店される山本淳一監督のために、喜ばれそうなグッズを用意しとかなくっちゃね。

 ◇

 吉富 真一(よしとみ しんいち) 映画グッズ専門店「シネマコレクターズショップ映画の冒険」店主。中学生の時、アラン・ドロンとテレビの洋画劇場の魅力に取り付かれる。映画研究部に入りたくて、一浪して1977年岡山大学法文学部経済学科に入学。ビデオのない時代に、年間200-300本を鑑賞。1996年39歳で脱サラして、大学時代通いつめた岡山市奉還町で開業。1957年、総社市の総社東映と同じ町内生まれ。

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