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林原美術館で中国絵画一挙公開 東京大教授「清明上河図、質高い」

原本の2倍近い人物がびっしり描かれた趙浙「清明上河図」(部分)

林原美術館所蔵の中国絵画について特別講演する板倉聖哲教授=7月23日

 林原美術館(岡山市北区丸の内)で、館蔵の中国絵画23件を初めて一挙公開する企画展「『清明上河図』と中国絵画の至宝」が開かれている。昨年来、調査してきた東京大東洋文化研究所の板倉聖哲教授が同館で特別講演し「岡山藩主池田家の伝来品に明治以降の“新渡り”を加えた、幅広く質の高いコレクション」と評価した。

 国宝を含む刀剣や池田家ゆかりの能装束など約9千件を所蔵する同美術館。中国絵画は開館以来研究が進んでいなかったが、分野別総目録作成の第1弾として板倉教授に調査を依頼。多くの発見があったという。

 展示の目玉が国重要文化財の趙浙(ちょうせつ)「清明上河図」(1577年)。原本(北京故宮博物院蔵)は、12世紀の宮廷画家張択端(ちょうたくたん)が春本番を告げる清明節の祭りでにぎわう北宋の都・開封を描き、中国風俗画の最高傑作とされる。

 有名な作品ゆえに、16世紀ごろから南部の蘇州で模本が盛んに作られ、現存するだけで100本以上。「ただ、作者と制作年が明確な“オリジナル”はほとんどなく、数ある清明上河図の基準となる作品。風俗画としての質も高い」と板倉教授。

 幅28・2センチ、長さ5メートル75センチに及ぶ図巻には原本の2倍近い1468人が描かれる。超高精細デジタル画像で拡大してみれば、わずか1センチほどの人物や動物にくま取りを施すなど、実に細やかなことに驚かされる。

 また、巻末に加えられた跋文(ばつぶん)(後書き)を読み込むと、豊臣秀吉の朝鮮出兵(92~98年)に対抗し明軍を率いた万世徳が戦後処理中の99年、現在のソウルに持ち込んだことが判明した。画中の都の繁栄に、回復しつつある東アジアの平和を重ねた感慨を記していることから「おそらく朝鮮の人にも見せ、共に太平を願ったことだろう。明末清初に多くの模本が制作された背景に、理想郷のイメージを清明上河図に求める人々がいたことがうかがえる」。

 都のにぎわいを描く事例は、同館蔵「洛中洛外図」(国重要文化財)など中国だけに限らない。日本では徳川氏が天下を制した17世紀初め、朝鮮は党派抗争を抑えて王権が確立した18世紀に目立つといい、「先駆例である清明上河図がどう伝わったのか、東アジアの文化交流史を読み解く手掛かりにもなりそうだ」と話を広げた。

 初公開は9件。17世紀の「鶴桃図」は江戸時代の狩野派に伝わった模本(東京国立博物館蔵)の原本で「当時の絵師は誰でも知っていた絵」という。孔子とその弟子の行状を記す「聖蹟図巻」10巻、「先賢像巻」2巻は「まとまって残る藩は全国でもまれ」で、岡山藩の儒教重視の姿勢を裏付ける。

 なじみの薄い中国絵画の鑑賞法については「見るほどに発見があるのが魅力。まず画中の人物の目の先を追ってみて」と助言する。例えば、明の画院で最高位に上った王諤(おうがく)の筆と確定した「春景山水図」は茶褐色の地からコウライウグイスや白い花が浮かび上がり、目と耳で春を楽しむ16世紀の文人の喜びが伝わってくるという。単眼鏡があれば、より深く楽しめそうだ。

 同展は9月3日まで(月曜休館)。全23件に解説を添えた「中国絵画名品図録」(1800円)も刊行した。
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