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伊方原発停止却下 住民の不安は拭えない

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、松山地裁は県内の住民らが運転差し止めを求めた仮処分の申し立てを却下した。

 伊方原発は計3基あり、1号機は既に廃炉が決まり、2号機は定期検査で停止している。3号機は昨年8月に5年ぶりに再稼働した。四国で稼働する唯一の原発である。

 伊方原発は特異な立地から全国の原発の中でも不安材料が多いと指摘されている。約8キロ北の沖合に国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が走り、原発周辺では南海トラフ巨大地震による被害も予想される。瀬戸内海に面した唯一の原発でもあり、事故で放射性物質が放出された場合の海洋汚染の懸念もある。

 「日本一細長い」といわれる佐田岬半島の付け根に立地し、事故が起きれば半島の先端側に住む約5千人が孤立する恐れがある。仮処分を申請した住民側は「日本で最も避難が困難な原発だ。過酷事故が発生すれば、多くの住民が被ばくを余儀なくされる」と主張している。

 松山地裁の決定は、新規制基準や原子力規制委員会による審査を「不合理ではない」とし、安全対策も四電側の主張をほぼ認めた。伊方原発を巡る仮処分では3月の広島地裁と同じ結果であり、電力会社や規制委の方針を追認する司法判断が示される傾向がこのところ続いている。同原発を巡っては同様の仮処分が大分地裁と山口地裁岩国支部で審理中だ。

 四電が基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を最大加速度650ガルと設定したことに対し、住民は「過小評価だ」と主張したが、松山地裁は退けた。住民側の不安はもっともだろう。熊本地震で1580ガルを観測するなど、近年は各地で千ガルを超える地震が起きているからだ。

 大きな争点の一つだった事故発生時の避難計画については、松山地裁は現時点での一定の合理性は認めながら、今後の避難訓練などで見つかった課題を踏まえて適切に修正されない場合は「著しく合理性を欠くこともあり得る」と指摘した。

 計画では、住民は原発の横を通って内陸側に逃げるか、港から船で大分県などへ渡ることになっている。しかし、唯一の避難道となる国道は地震で寸断される恐れがあり、津波で港が壊される場合もあり得る。地裁決定は「計画の見直しを続ける必要がある」と注文をつけたが、事故はいつ起きるか分からない。住民の安全に司法が真摯(しんし)に向き合ったかどうかは疑問である。

 避難計画の内容が十分でなくても原発の再稼働が認められるのは、再稼働の要件になっていないからである。想定外の事故は起きる。それを踏まえて対策を講じよというのが、6年前の東京電力福島第1原発事故の教訓ではなかったのか。避難計画が実効性を伴うことが再稼働の大前提であるべきだ。

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