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「共謀罪」施行 捜査権の乱用を防ぐには

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法がきょう施行された。

 共謀罪は過去3回、国会に提出され、廃案になった。政府は今回、共謀罪の目的はテロの未然防止と強調し、「テロ等準備罪」と言い換えたが、本質は変わっていない。

 過去の法案に比べて「組織的犯罪集団」などの構成要件が加わったものの、条文では「テロリズム集団その他」と書かれている。政府は「その他」には暴力団などが含まれるとするが、市民団体や労働組合も対象になるのでは、との懸念は残ったままだ。

 多くの疑問や不安が国会審議では拭えず、しかも政府、与党は参院での委員会採決を省くなど異例の手法で採決を強行した。「成立ありき」の強引な国会運営が、都議選での自民党惨敗を招いたことは否めない。

 懸念される捜査機関による乱用が行われないよう、法施行後も、国民がその危うさに関心を持ち続ける必要があるだろう。

 共謀罪で何が変わるのか。一般的に犯罪は、共謀(計画)―予備―未遂―既遂の4段階がある。日本の刑法体系ではこれまで既遂後の処罰を原則としてきたが、今後は対象となる277の犯罪について共謀段階から処罰可能になる。共謀での処罰は「準備行為」があることが要件とされているが、下見などが準備行為に当たるかどうかの見極めは難しく、事前の監視が必要になると指摘される。

 国会審議では、政府は「一般の人々は処罰対象にならない」「捜査機関が国民の動静を常時監視することはない」と説明した。「裁判所がチェックするので恣意(しい)的な運用はない」とも強調している。

 だが、大分県では昨年、参院選で野党を支援する労働組合などが入る建物の前に警察が監視カメラを仕掛けていたことが発覚した。岐阜県では風力発電施設の建設に反対しそうな市民の情報を警察が集め、企業側に提供していた。

 衛星利用測位システム(GPS)を使った捜査では最高裁が今年3月に「令状なしは違法」と判断するまで、警察は裁判所の令状がいらない「任意捜査」を行っていたことも分かっている。

 こうした現実をみると、共謀罪新設で捜査権限が拡大すれば、適用対象がなし崩し的に広がっていくのではないかとの心配が出てくるのも当然だ。裁判所は捜査の在り方をこれまで以上に厳しくチェックする姿勢が求められよう。

 亡命した米中央情報局(CIA)の元職員、エドワード・スノーデン氏は米国家安全保障局(NSA)が情報監視システムを日本側に供与したと証言した。事実なら日本政府は個人のメールや通話などの大量監視が可能な技術を既に手にしていることになる。

 監視社会の入り口に立っているのではないか。その自覚を、まずは国民一人一人が持たねばなるまい。

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