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性別適合手術不問へ要件緩和訴え 上級審判断待つ新庄の臼井さん

戸籍上の性別変更の要件緩和を求めている臼井さん(右)。性別を変え山本さん(左)との婚姻届が受理される日を待っている

 女性に生まれながら男性として生きたい―。戸籍上の性別変更の要件緩和を求めて裁判所に申し立て、2月に却下された性同一性障害の臼井崇来人(たかきーと)さん(43)=岡山県新庄村。日本と違い海外では、臼井さんが疑問を感じている「性別適合手術」を性別変更の要件としない国が目立つ上、国内でも性的少数者(LGBT)の権利を尊重する動きが自治体や企業に見られる中、訴えが認められる日を信じて上級審の判断を待っている。

 「体にメスを入れる必要性は全く感じていない」

 性同一性障害特例法(2004年施行)は、戸籍上の性別変更の要件として精巣や子宮などを切除する性別適合手術を事実上求めている。体は異性のまま戸籍上同性となったカップルに子どもが誕生する可能性を排除するためとされるが、体は女性で心は男性の臼井さんは受けていない。健康な体を傷つけることや身体の特徴で性別を判断されることに強い疑問を感じているからだ。

  ◇ ◇

 性同一性障害の人に対する海外の政策に詳しい京都産業大の渡辺泰彦教授(民法)によると、国外では欧州を中心に性別変更に適合手術を要件としない国が珍しくない。性別変更の手続きを定める法律を04年に制定した英国をはじめ、手術要件を違憲とする司法判断を受けて11年に法律から削除したドイツ、スペインやデンマークなどが当てはまる。14年には世界保健機関(WHO)が要件ではないとする共同声明を発表した。

 渡辺教授は「適合手術は本来、性同一性障害の治療のためにされるべき医療。戸籍の性別を変えるためではない」と指摘し、海外の流れを評価する。

 国内でも、性別変更の要件を巡る問題は別として、性的少数者を取り巻く環境に変化が見え始めている。

 東京都渋谷区は15年3月、同性カップルを「結婚に相当する関係」と公的に認める証明書を交付する条例を制定。大阪市は昨年12月、家庭で暮らせない子どもを育てる養育里親に男性カップルを認定した。

 民間企業でも、ソフトバンクが昨年10月、資生堂が今年1月に、同性婚のパートナーも配偶者として処遇するよう社内規定を改定。資生堂は「多様な人や価値観が共存してこそ会社は成長する。いろんな人が働ける職場づくりの一環であり、社会の意識変化も考慮した」とする。

  ◇ ◇

 臼井さんは昨年3月から、パートナーの山本幸さん(39)と、幸さんが元夫との間にもうけた長男(7)と3人で暮らす。地域では「夫婦と息子という一般的な親子と同様に扱ってもらっている」という。

 ただ、性別適合手術を性別変更の要件にするのは「自己決定権を侵害し違憲、無効」とする訴えは一審で認められなかった。「要件をどう定めるかは国会の裁量」「性別変更にはさまざまな考え方があり、憲法に違反するほど不合理とは言えない」とされた。

 裁判所への申し立て後には心ないコメントも臼井さんのブログなどに寄せられた。それでも負けず、多様な性の在り方を認める必要性について講演などで説いている。

 「LGBTへの世間の理解はまだ進んでいない。性別変更を実現し、正真正銘の夫婦となれるよう社会に訴え続けたい」
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