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「共謀罪」法成立 「良識の府」の使命どこへ

 「良識の府」といわれてきた参院の使命は一体、どこへ行ったのか。

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が参院で可決、成立した。審議が尽くされたとは言えない中、与党は委員会採決を省く「中間報告」という異例の手法で一気に本会議で採決した。

 改正法は2人以上で犯罪の計画を立て、誰かが準備行為を行った場合、計画に合意した全員に刑罰を科すものだ。犯罪の実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系を大きく変える内容である。

 与党はかねて、慣例で参院の審議時間は衆院の3分の2の約20時間で十分との見方を示していたが、実際にはそれにも満たない約18時間で打ち切った。あまりに強引な幕引きで、熟議を放棄したとのそしりは免れまい。

 過去には委員長が野党議員で委員会採決に応じない場合、与党が対抗手段として「中間報告」の手法を使ったことはある。ところが今回、参院法務委員長は与党の公明党議員であり、採決ができない環境にはない。

 改正法の成立を期すため、政府、与党は当初、国会会期の延長を検討していた。ところが一転、異例の手段を使ってまで成立を急いだ。国会では学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐって野党が追及を強めており、少々乱暴でも早く改正法を通して国会を閉じた方が得策という判断が働いたのではないか。そう見られても仕方なかろう。

 さらに、混乱が予想される委員会採決の場面を有権者に見せれば、23日告示の東京都議選で公明党にも悪影響を与えるとの配慮から、与党が委員会での採決を省いたとの見方もある。事実なら、あまりにも国会を軽視した対応と言わざるを得ない。

 改正法について、政府は「適用対象は組織的犯罪集団であり、一般人は関係ない」と説明してきた。しかし、組織的犯罪集団の要件は条文に明記されていない。適用対象は曖昧で、捜査機関による拡大解釈を招くのではないかとの指摘がある。犯罪を計画しようとする人の内心を立証するために、捜査機関による監視態勢がこれまで以上に強まる恐れもある。

 こうした懸念に対し、国会では一つずつ具体例を挙げながら、議論を積み重ねることが求められていたはずだ。だが、金田勝年法相の答弁は不安定で、与野党の議論はかみ合わないままだった。国連人権理事会の特別報告者は「深刻な欠陥のある法案を拙速に押し通すことは正当化できない」と批判するが、政府、与党は一顧だにしていない。

 「安倍1強」体制の下、強硬な国会運営が続く。目につくのは対話を重視しようとせず、批判や異論に向き合おうとしない政府、与党の対応だ。議会制民主主義の根幹が揺らいでいるのではないか。そんな危機感すら覚える。

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