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「共謀罪」法案 審議は尽くされていない

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、政府、与党は18日に迫った国会会期を小幅延長し、成立させる構えという。

 審議を尽くすための会期延長なら否定はしない。しかし、与党内から聞こえてくるのは学校法人「加計学園」(岡山市)を巡る問題で野党の追及を避けるため、できるだけ延長を小幅にとどめて法案を通し、早期に国会を閉じたいという思惑ばかりである。

 与党幹部からは参院での審議時間は衆院の3分の2の約20時間で十分との発言も出ている。だが、審議の場が衆院から参院に移り、疑問点は解消するどころか逆に増えている。これほど懸念の多い法案を、想定時間に達したからと数の力で押し通すことは許されない。

 法案を巡っては、適用対象の「組織的犯罪集団」の定義が曖昧で、対象犯罪も277と多いことから、捜査機関の恣意(しい)的な運用を招くといった懸念が指摘されてきた。政府は「組織的犯罪集団が対象で一般人は捜査対象にならない」と強調してきたが、8日の参院法務委員会で政府側は、組織的犯罪集団の構成員だけでなく、集団に関わりのある「周辺者」も処罰対象になり得ると言及した。

 こうした認識は衆院審議では示されておらず、適用対象が一気に広がる可能性がある。この点だけをみても、審議が尽くされていないのは明らかだ。

 法案に懸念を示す国連の特別報告者が5月に安倍晋三首相に書簡を送ったが、その後の政府の対応にも首をかしげる。参院本会議で首相は書簡について「一方的見解を表明した、著しくバランスを欠く不適切なもの」と批判した。

 しかし、特別報告者は国連の人権理事会から任命された専門家であり、日本は人権理事会の理事国も務めている。書簡を単なる個人の見解として批判する政府の対応には、国際人権法の専門家からも批判が出ている。

 書簡は処罰要件となる犯罪の「計画」や「準備行為」などの定義が曖昧で、「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と指摘。さらに特別報告者は法案の公式な英訳文と詳しい説明を政府に対して求めている。

 政府がやるべきは書簡を批判することではなく、指摘を真摯(しんし)に受け止め、誤解があるというなら根拠を示して丁寧に回答することだ。国会ではなお一層、慎重に審議を尽くす必要がある。異論に向き合わない政府の姿勢は、法案への疑念を国内外に印象づけるばかりである。

 政府は、国連の国際組織犯罪防止条約の締結のために法案が必要という。条約の締結自体が必要なことは与野党の多くが認めている。ならば、処罰要件などをより明確化し、対象犯罪をさらに絞り込むといった議論をすべきだ。政府、与党は「成立ありき」で突き進むべきではない。

「共謀罪」法案

審議は尽くされていない

2017.6.13

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