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川崎医科大 膵臓手術の新技法開発 上野教授が補助器具考案 安全高める

上野教授が考案した補助器具

上野富雄教授

 川崎医科大の上野富雄教授(消化器外科学)が、難易度が高いとされる膵臓(すいぞう)の手術をより安全に行うための技法を開発し、同大付属病院(倉敷市松島)で取り組んでいる。自らが考案した補助器具を使って実現させた。他の臓器にも応用できる可能性があるという。

 がんの摘出など膵臓の手術では、膵臓で分泌される膵液(消化液)を運ぶ膵管から液が漏れると、周りの組織を溶かし出血するなど重篤な合併症を引き起こす恐れがある。最悪の場合は死に至る。

 膵臓の「膵頭部」と呼ばれる部分にできたがんを取り除く「膵頭十二指腸切除術」では、直径数ミリの膵管と、小腸や胃を糸でつなぎ直す吻合(ふんごう)手術が必要で、特に高度な技術が求められる。この手術では30~60%で合併症を起こすとの統計もある。

 上野教授が考案した技法は、吻合の際、糸をつけた針が膵管の内外を繰り返し行き来する従来のやり方でなく、膵管を貫通することで内壁を傷付ける恐れをなくした。ピンセットの先端に樹脂を付けた補助器具を駆使して糸を操りながら、よりしっかりと小腸などに縫い合わせられ、膵液の漏れを防ぐことができる。

 前任の山口大時代の2013年5月に臨床研究をスタート。昨年9月に川崎医科大に移った後も含め、累計で48例を手掛けた。重篤なトラブルはないといい、上野教授は「膵臓手術用に考案したが、細い管を縫い合わせる手術に広く活用できるのでは」と話す。

 補助器具は、山口大と医療機器のジェイ・エム・エス(JMS、広島市)、精密加工のミヤハラ(山口県周南市)の3者が共同で開発。昨年11月に医療機器として国の承認を受けた。使い捨てで、JMSが製造と販売を担当し、近く本格販売する。

構想から15年「患者のために」挑戦

 「膵臓の手術は執刀医の技量に頼るところが大きい。誰もが安全に手術できる方法を生み出したかった」。川崎医科大の上野富雄教授は、構想を練り始めた15年余り前を振り返る。

 新しい手術法実現の鍵を握る補助器具を最初に試作したのは2006年。最終形のピンセット形でなく、円すい形の金属を膵管に差し込み、吻合用の糸を引き出す仕組みだが、金属の加工が難しく断念。ウレタン製にしたり、ピンセットの先に樹脂ではなくワイヤを付けたりする案も試したが、コスト面の課題などで実用化はできなかった。

 最終的には、ピンセットの先に柔らかく、コスト面でも優れた樹脂・ポリプロピレンを使うことで落ち着いた。先端をつないだループ状にすることで、より確実に糸をつかんで引き出すことができるようにした。

 「苦労もあったが、いろんな人の知恵やアドバイスでここまでたどり着けた」と上野教授。「患者ために」との思いが挑戦を支えたという。
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