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「共謀罪」衆院可決 多くの疑問残ったままだ

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案がきのう、衆院本会議で与党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。

 安倍政権下では特定秘密保護法をはじめ、安全保障関連法、カジノ法など国民の間でも賛否が割れる法案の採決で、与党の強権的な議事運営が続いてきた。今回も、民進党など野党が採決に反対するのを押し切った。

 共同通信社が20、21日に行った全国電話世論調査で、今回の法案に対する政府の説明が十分だと思わないとの回答は77・2%に上った。国民の不安が払拭(ふっしょく)されていない段階で、採決を急ぐ与党の姿勢は理解できない。

 共謀罪を新設する法案は過去3度、国会に提出されている。しかし、適用対象が曖昧で市民団体が処罰される恐れが拭えず、いずれも廃案になった。今回、政府は適用対象を「組織的犯罪集団」と定め、現場の下見など犯罪の「準備行為」を構成要件に加えた。構成員2人以上で犯罪を計画し、少なくとも1人が準備行為をすれば計画に合意した全員が処罰される。

 疑問点はいくつも残ったままだ。政府が国際組織犯罪防止条約を締結するため必要とする立法理由は正しいのか。対象犯罪を277とするのは妥当なのか。「組織的犯罪集団」や「準備行為」はどのように定義し、捜査当局の恣意(しい)的な運用が広がる可能性はないのか。いずれの論点も、審議では掘り下げ不足だったと言わざるを得ない。

 組織的犯罪集団の認定では犯罪の常習性などは要件とされておらず、一般の団体にも適用される余地がある。準備行為も、銀行で現金を下ろしたり、散歩をしたりといった日常的な行為とどう区別できるのかは曖昧なままである。

 金田勝年法相ら政府側は「一般人は捜査の対象になることはない」と繰り返し強調したが、一方で、何らかの嫌疑が生じれば一般人ではないとも答弁している。結局は、捜査当局の運用次第という印象は拭えない。

 犯罪の計画や準備段階で罰することができる今回の法案が成立すれば、既遂での処罰を原則としてきた刑法の例外を一気に広げる。犯罪をしようとする人の内心を立証するため、さまざまな手法で捜査が拡大し、監視態勢が強まる恐れも否定できない。

 法案には、プライバシーの権利に関する調査を行う国連の特別報告者が懸念を示し、安倍晋三首相宛てに書簡を送っている。「計画」や「準備行為」などの定義が曖昧で、「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」との指摘である。政府、与党は真摯(しんし)に受け止め、反論するなら十分な根拠を示す必要があるだろう。

 法案審議は参院に移る。国民の不安を取り除く丁寧な審議がないまま、成立を急ぐことは許されない。

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