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天皇退位法案 問い続けたい「象徴とは」

 政府はきのう、天皇退位に関する皇室典範特例法案を閣議決定し、衆院に提出した。昨年8月、陛下がビデオメッセージで退位の意向をにじませてから9カ月。江戸時代の光格天皇以来、約200年ぶりとなる天皇退位に向けた法整備が大詰めを迎えている。

 法案はまず1条で、象徴天皇としての活動を続けることが困難となる状況を陛下が「案じておられ」、国民が「理解し、共感している」とした。天皇による恣意(しい)的退位や、政権が退位を強制する余地を残さぬよう、退位に至る経緯を記したものだ。皇位継承は皇室典範で定めるとする憲法に反するとの指摘を避けるため、特例法は典範と「一体を成す」と規定した。

 退位を巡っては、衆参両院の正副議長が各党派の意見を聞いて国会としての見解をまとめた。法案はそれに沿った内容で、6月上旬には成立する見通しだ。2018年中の退位が想定されている。

 退位の法整備について、世論調査などでは国民の多くが典範改正による恒久的制度が望ましいとしている。だが、結局は陛下一代限りに落ち着いた。結論ありきで事を急いだ感も否めない。

 昨年秋の有識者会議設置以降、国民の目に触れる場での議論は国会が初めてとなる。天皇の地位は「国民の総意」に基づくものであり、審議を通じて広く理解と納得を得ていくことが求められよう。

 陛下は昨年のビデオメッセージで、高齢による体の衰えなどによって、全身全霊をもって務めを果たすことが難しくなると率直に不安を打ち明けられた。投げ掛けられたのは、象徴天皇の在り方そのものだったとも言えよう。陛下は人々に寄り添い、国民と共にあることの重要性を強調した。一方、有識者会議では、宮中で国と国民のために祈ってくだされば十分だ、という意見もあった。

 天皇という存在や、被災地訪問などの公的行為の在り方について国民が考える契機になったことは間違いない。だが、法整備の過程で、そうした点の議論が十分に深まったとは言い難い。これで論議に区切りをつけるのでなく、これからの天皇や皇室の在り方について今後も考えていくことが大切だろう。

 退位への道筋はつきつつあるが、将来的にみれば皇族が減少するという問題は避けて通れない。先日は秋篠宮家の長女眞子さまが婚約されることが明らかになった。近い将来、20~30代の他の女性皇族も結婚によって皇籍を離れることが予想される。

 女性皇族が結婚後も「女性宮家」として皇室にとどまる制度の創設に関しては、特例法案の付帯決議に盛り込むかどうかで、慎重な自民党と前向きな民進党の間で綱引きが行われている。皇室の先細りは差し迫った課題であり、いつまでも先延ばしにはできない。しっかりと議論を進めていくことが必要だ。

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