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憲法施行70年 拙速許されぬ改憲の論議

 日本国憲法はきょう、施行から70年を迎えた。戦後日本の再出発にあたり、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本理念に掲げ、敗戦に打ちのめされた国民に受け入れられ、定着した。占領下で制定されたことをもって連合国軍総司令部(GHQ)による押し付けだとする批判も根強いが、今の繁栄や平和な社会をもたらした重みはあらためて言うまでもない。

 憲法改正がかつてないほど現実味を増す中で迎えた節目である。昨年夏の参院選の結果、改憲に賛同する勢力は衆参両院ともに3分の2を超えた。数字上、国会が改憲を発議する条件が整い、開会中の国会では俎上(そじょう)に載せる項目の論議が衆院憲法審査会で始まっている。

 ただ、審議は現在足踏み状態だ。復興相だった今村雅弘氏の被災地を巡る失言などに野党が反発し、先月は2度にわたり延期された。自民党は、大災害など緊急事態時の人権制限や国会議員の任期延長、環境権など新しい人権の創設などの改憲項目を絞り込むための議論を、秋の臨時国会までに終えたい考えだ。

 自民党に求められるのは、事を急がず、国会の幅広い合意を得る姿勢である。改憲には国民投票で過半数を要する。国民に十分な理解が広がることが前提であり、国会でも少なくとも野党第1党の民進党との合意は必要だろう。

 前のめりな姿勢も気になるところだ。初めての改憲に失敗すれば次はないという危機感からか、野党や国民の反発が少ないテーマを探っているかのようにも映る。何が何でも、まずは改憲の突破口さえ開けばいい。そんな考えは厳に慎まねばなるまい。

 もちろん、改憲の是非そのものについても、国民的な議論が必要なことは言うまでもない。

 きょうは、地方自治法も施行から70年の節目である。地方自治の規定がなかった明治憲法に代わり、現憲法は「地方自治」に1章を割いた。地方の自立が民主主義国家の基礎をなすとの考えに基づくものだ。ただ、中身は地方公共団体には議会を置き、首長や議員を直接選挙で選ぶことなど計4条のみである。

 憲法審では地方自治も焦点の一つになっている。先月は「国と地方の在り方」を巡る参考人質疑があり、地方自治体の権限拡充を求める意見や、国と地方の役割分担が憲法に書かれていないといった指摘が専門家から出された。

 2000年に施行された地方分権一括法は、戦後ずっと「上下」だった国と地方の関係を「対等」と位置付けた。折しも沖縄では、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先となる名護市辺野古地区で、県の反対を押し切って護岸工事が始まっている。

 国と地方の関係や地方自治の在り方を憲法にどう反映させるべきなのか。地方の視点を踏まえ、丁寧に議論を重ねていくことが欠かせない。

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