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辺野古埋め立て 工事中断して対話に戻れ

 このままでは沖縄県と政府の溝が一層深まるばかりか、美しい辺野古の海の原状回復も困難になる。政府は工事を中断し、対話のテーブルにもう一度着くべきだ。

 沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の移設を巡り、政府が名護市辺野古沿岸部で埋め立てにつながる護岸工事に着手した。

 きのうは石材を入れた袋が次々と重機で波打ち際に下ろされた。護岸が完成すれば内側に土砂を入れ、本格的な埋め立てが始まる。これまでの準備作業を含め、完了まで5年の工期を見込んでいる。

 当時の橋本龍太郎首相が米側と、普天間飛行場の返還に合意(1996年)してから21年。移設問題は混迷を抜け出せないまま、大きな節目を迎えたと言えよう。

 一方、「あらゆる手段を駆使して辺野古に基地は造らせない」とする翁長雄志知事は徹底抗戦の構えである。着手を批判し、工事差し止め訴訟を起こすと明言した。

 政府は3月末で期限が切れた「岩礁破砕許可」の再申請をしていない。許可のない護岸工事は岩礁破砕にあたるとして提訴する。前知事による埋め立て承認の「撤回」も検討されている。

 ただ政府は、現場水域の漁業権を地元漁協が放棄したとして、岩礁破砕許可の再申請は不要との立場だ。もし埋め立て承認が撤回されれば「知事権限の違法な乱用」として訴訟で争う方針という。

 しかし、沖縄の声を無視して埋め立てを強行しても、反基地感情がさらに燃え上がるのは目に見えている。日米安保体制の信頼に支障も出かねない。ここはいったん、政府が冷静になってほしい。

 なぜ、沖縄が移設に反対するのか。それは、国土の0・6%の土地に米軍専用施設の7割が集中する現状への不満や不安があるからだ。政府は辺野古移設について「基地負担の軽減を目に見える形で実現する」と胸を張るが、県民には「負担のたらい回しだ」との反発が根強くある。

 移設反対を公約に掲げた翁長知事は3年前、移設を容認した前知事を10万票の大差で破った。選挙での民意を尊重すれば、政府は粘り強く交渉するのが筋であろう。移設が安全保障上「唯一の選択肢」として押し切ろうとしても、とても納得はできまい。

 今年になって沖縄県内の市長選で安倍政権が推す候補が3連勝したことが、着工の追い風になっているとの見方もある。だが、市長選は辺野古移設問題ではなく地元の実情が争点だった。「民意が変わった」と判断するのは楽観が過ぎよう。

 沖縄の基地問題は地方と国の対立の構図であり、地方自治の理念からすれば、どこでも起こりうることだ。安全保障は国の専権事項だとしても、地方の意向がないがしろにされていいはずはない。そのことにわれわれも目を向けていく必要がある。

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