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「まだ死ねないよ」。スクリーン…

 「まだ死ねないよ」。スクリーンには、病床の谺(こだま)雄二さんが映し出されていた。ハンセン病差別と闘い続け、2014年5月に亡くなる直前の姿である。その82年の生涯を記録した映画が完成し、東京都内で上映会があった▼7歳で療養所に隔離収容された。薬で回復したが、片目を失い、顔には変形が残った。母と兄も発病し、一家は激しい差別を受ける▼〈…鳥は飛ばなければならぬ。獣は地を這(は)わねばならぬ。僕は、歩かねばならぬ…〉。魂の叫びをつづった詩には、後に隔離政策の過ちを訴え、国家賠償訴訟を率いる原点が見て取れた▼晩年に心血を注いだのが、入所していた栗(くり)生(う)楽泉園(群馬県草津町)に終戦直後まであった「重監房」の復元だ。抜け出したりした患者を闇と極寒に閉じ込めた懲罰施設である。人間扱いされず、収容者の4分の1が亡くなったとされる▼映画で「まだ死ねない」と語っていたのは、念願の重監房資料館が完成した日のことだ。知人にはなお、入所者たちの本名を刻んだ碑を建てたいと話していたという▼今も親族らに差別が及ぶのを恐れ、多くの元患者が本名を名乗れぬまま異郷の療養所で暮らす現実がある。名前と尊厳を取り戻せる社会こそ谺さんが残した宿題といえよう。映画は、5月に瀬戸内市などで開かれるハンセン病市民学会でも上映予定だ。

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