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原発の司法判断 もしもの不安に応えたか

 原発の運転の可否を巡る司法判断が相次いで示された。大阪高裁は、昨年3月に大津地裁が出した関西電力高浜原発(福井県)3、4号機の運転を差し止める仮処分を取り消した。広島地裁は四国電力伊方原発(愛媛県)3号機の運転差し止めを求めた仮処分申し立てを却下した。

 申し立てた住民らには厳しい判断である。福島第1原発の事故をきっかけに高まった国民の不安に十分応えているのか、大いに疑問がある。

 いずれも福島の事故を踏まえて原子力規制委員会が作った新規制基準の適合審査に合格し、再稼働が認められた原発である。争点の一つとなったのは、新基準そのものの安全性だった。

 中でも高浜原発は、大津地裁の決定により、稼働中の原発が司法判断で停止した全国初の事例である。決定が高裁段階でも維持されるのかが注目されていた。

 地裁は、福島事故の調査が不十分であるとした上で、新基準について「安心、安全の基礎と考えるのはためらう」と疑問を示し、安全確保にはさらなる過酷事故対策が必要だとした。

 これに対し、大阪高裁は事故には未解明な部分が残るとしながら「教訓を踏まえ、最新の知見に基づいている」と新基準の合理性を認め、原発の安全性を認定する正反対の判断を示した。

 だが、事故から6年が過ぎても、原子炉内部はロボットなどを使って一部を撮影できるようになったばかりで、溶け落ちた核燃料(デブリ)の姿さえ確認できていない。事故の全容が判明しているとは到底言えないだろう。

 新基準は、自主性に任せていた津波などによる過酷事故の備えを義務付け、地震対策ではより古い時代の活断層を考慮するよう求めた。とはいえ規制委自身が「絶対の安全が確保されているとまでは言えない」と述べている。高裁の決定は新基準を絶対視しすぎていると言えないか。

 地裁決定後に発生した熊本地震も争点となったが、「大きな揺れが連続する想定をしていない」との住民の訴えは、「連続発生はほぼあり得ない」と一蹴された。住民避難計画については不備を認めながら、改善に取り組む姿勢があるとして是認した。

 伊方原発を巡る広島地裁の判断も大阪高裁と同様である。新基準の合理性を認めた上で「住民が放射線により重大な被害を受ける具体的な危険はない」としている。

 二つの司法判断から浮かび上がるのは、政府や電力会社が進めようとしている原発再稼働の流れを追認するかのような姿勢である。

 国民の多くはいまだに原発への不安を拭えずにいる。事故がひとたび起これば市民の日常は破壊される。だからこそ、万に一つの可能性も考慮するというのが、福島の教訓ではなかったのか。あらためて問いたい。

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