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豊島の産廃問題 教訓を未来へ継承せねば

 国内最大級の産業廃棄物が不法投棄された香川県の豊島(土庄町)で、産廃の島外への搬出がきょう完了する見通しとなった。同県と豊島住民が合意し、今月末を搬出期限と定めた公害調停から約17年。大きな節目を迎えた。

 豊島問題は、戦後の高度経済成長の下で大量生産、大量消費、大量廃棄を続けてきた社会の問題点を浮かび上がらせたといわれる。最終処分場が不足する中、産廃は人口過密の都市部から、過疎が進む山奥や離島に運ばれた。その典型が豊島だった。

 不法投棄は島内の処理業者によって1970年代後半から始まり、1990年に兵庫県警が摘発した。島の西端の約7ヘクタールに自動車の破砕くずや汚泥、廃油などが積まれ、現場からは高濃度のダイオキシンや鉛が検出された。汚染された地下水が瀬戸内海に漏れ出す恐れもあった。

 当時は不法投棄された産廃を処理する仕組みがなく、島の住民が立ち上がるしかなかった。住民は県に産廃撤去を求め、93年11月に国の公害調停を申請。元日弁連会長の故中坊公平氏が弁護団長となって住民運動を支え、調停は2000年6月に成立した。03年から豊島の約6キロ西にある直島(同県直島町)に船で運び、焼却・溶融する無害化処理が進められている。

 最大の教訓といえるのは、不法投棄で環境が汚染されると、原状回復に膨大なコストがかかるということだろう。発覚当初、産廃は約50万トンと推計されたが、土壌も汚染されていたため、最終的な処理量は産廃と土壌を合わせ91万トン以上に膨らんだ。これまでに要した処理費の総額は700億円を超え、うち約6割を国、残りを香川県が負担した。これほど多額の国民の税金が使われた事実は重い。

 行政の姿勢も厳しく問われた。不法投棄が続いていた間、住民は再三にわたって対策を求めたが、香川県は有効な手を打たなかった。県職員は100回以上も現場に立ち入り調査をしながら見過ごした。不作為がいかに環境汚染の拡大を招くか、全国の自治体職員は豊島の事例に学ぶべきだろう。住民の側も「行政は間違うことがある」という前提で、行政をチェックする姿勢が欠かせない。

 「安ければいい」と処理業者に廃棄物を任せた排出企業の責任が初めて問われたケースでもあった。その後、廃棄物処理法改正などで排出企業の責任がより明確にされ、所有者が廃車処理費用を負担する自動車リサイクル法などの整備も進んだ。折しも調停が成立した2000年には、廃棄物の発生抑制を目指す循環型社会形成推進基本法も制定された。豊島問題は、大量廃棄を前提にしてきた経済活動やライフスタイルそのものに警鐘を鳴らしたといえる。

 豊島問題を知らない若い世代も増えた。豊島が示した教訓をあらためて確認し、継承していきたい。

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