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残業上限規制 抜け道封じ実効性高めよ

 政府が進める働き方改革で最大の焦点となっていた残業時間の上限規制が「繁忙期は月100時間未満」で決着した。きのう開かれた政府の働き方改革実現会議で、労使双方から提案された。月内に実行計画がまとめられ、労働基準法の改正に向けた作業が本格的に動きだす。

 残業規制案は、これまで厚生労働省が目安としてきた法的拘束力のない「月45時間、年360時間」を原則的な上限として労基法に明記する。繁忙期に限って年6カ月まで45時間を超えることを認め、その延長分を含めて年720時間までとする。

 1カ月の上限については、100時間ラインを巡って労使が攻防を続けた。連合は100時間に届かない「未満」とするよう求めたのに対し、経団連は100時間を含む「以下」を主張した。

 実質的な違いはわずかだが、連合は改革を象徴する文言と考えてこだわったようだ。今週、安倍晋三首相が「未満」での決着を要請し、経団連が応じた。残業が事実上の青天井となっている現状からは前進したといえる。

 とはいえ、過労死の認定基準の一つである月100時間に近い残業を法律で認めることには異論も少なくない。過労死遺族らは「過労死ラインの合法化だ」「人命に関わることに特例は認められない」と反発している。仕事の状況次第では、月100時間近い残業をさせても問題はない。改革の趣旨にそぐわないそんなメッセージを企業に与えてしまう懸念も拭えない。

 鍵となるのは、改革の実効性をいかにして高めていくかである。時間に上限を定めても抜け道があっては意味がない。残業を規定内に収めようとして労働者が過少申告したり、企業がそれを強要したりするケースも考えられよう。サービス残業に対して労基署が厳しく目を光らせていくことが必要だ。

 積み残しになった課題もある。終業から次の始業までに一定の休息を義務付ける勤務間インターバル制度は、企業に努力義務を課すにとどまりそうだ。欧州では11時間のインターバルを設けている例が多い。労働側は日本でも法律で規制するよう求めていたが、すぐには導入できない企業もあるとして見送られた。

 厚労省によると、制度を導入済みの企業は2%にとどまっている。経営者側には「業務に支障が出る」といった抵抗感が根強いだけに、努力義務規定だけでどこまで導入が進むかは見通せない。

 今回の働き方改革は始めの一歩にすぎない。残業規制などを盛り込んだ改正法の施行から5年後に、あらためて内容を見直すことになっているが、労働時間削減の実績などを見ながら、5年といわず不断の見直しを進めていくべきだろう。長時間労働もやむなしとしてきた日本の企業風土や働く人自身の意識改革も求められている。

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