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GPS違法判決 恣意的な捜査に強い警鐘

 捜査対象者の車に、衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付ける警察の捜査手法を巡り、最高裁大法廷が窃盗事件の上告審判決で「プライバシーを侵害し、強制捜査に当たる」という初めての判断を示し、裁判所の令状がなければ違法だと指摘した。

 逮捕や家宅捜索といった強制捜査は裁判所から令状を受ける必要がある。裁判官がチェックすることで容疑者らの人権保護を図るとともに、恣意(しい)的な捜査を防ぐ目的だ。

 警察はそもそも、GPS使用を任意捜査と位置付け、令状は必要ないとしてきた。だが、裁判所の違法判断が相次いだため、警察庁は昨年9月、現場検証などで使う「検証許可状」を取るのも一つの方法と全国の警察に連絡した。

 最高裁は今回、GPSによって犯罪と無関係な事実まで取得してしまう危険性に触れて、検証許可状ではその手当てができないと警察の主張を一蹴した。令状主義を軽視するかのような、あいまいな運用に強い警鐘を鳴らし、捜査権を乱用しないように歯止めをかけたことは評価できる。

 これを受け、警察庁がGPS捜査を控えるよう全国の警察に通達したのは当然だろう。坂口正芳長官はきのう、「これまで取り組んできた、いろいろな手法を駆使しながら対応していく」と述べた。

 現場の警察官には「捜査が難しくなる」と困惑が広がっているという。確かに、居場所を確実に把握できるGPS捜査とは異なり、尾行や張り込みでは対象者を見失う恐れもあろう。

 とはいえ、GPSのような装置はデータの蓄積量も膨大で、秘密裏にプライバシーを侵害する。このまま任意捜査の扱いで良いとは考えられないという最高裁の判断はうなずける。

 判決がさらに踏み込んだのは、GPS捜査については今の法律が定めている令状に基づく対応では手続きの公正さが確保できないなどとして、新たな法整備が望ましいとした点だ。法務省が立法に向けた検討に入ることになろう。

 捜査機関が電話やメールを傍受する手続きを定めた通信傍受法と近い形になるとみられる。同法に対しては「憲法が保障する通信の秘密を侵害する」との強い批判が出て、法制審議会への諮問から1999年8月の成立までに3年近くかかった。

 GPSについても、開かれた議論を十分に重ねることが欠かせない。使用する犯罪や対象者、期間、捜査を終えた後の検証の在り方などを厳重に定めることが必要だ。その上で、GPSを使う利益がプライバシー侵害の問題を上回った場合に限るなど国民的な理解を得なければならない。

 科学技術の進歩によって今後、GPS以外の新たな捜査手法が導入されることも予想される。なし崩し的な法律解釈で運用を広げるのではなく、ルールを厳格に定めるべきである。

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