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新学習指導要領 「深い学び」支える環境を

 文部科学省が小中学校の次期学習指導要領の改定案を公表した。小学校は2020年度、中学校は21年度から全面実施される。

 指導要領は教育課程の基準となるもので、約10年ごとに改定されてきた。ゆとり教育への批判から、前回の改定では学習内容や授業時間が増やされた。今回の改定の特徴といえるのは、学習の量を減らすことなく、学びの質の改善を打ち出したことである。

 目指すものとして「主体的・対話的で深い学び」が明記された。中央教育審議会が昨年12月の答申で提唱した「アクティブ・ラーニング」のことで、「多義的なカタカナ語は法令で使えない」などの理由で言い換えられたが、方向性は変わっていない。

 アクティブ・ラーニングは、例えばグループで調べたり、話し合って結果を発表したりする学習方法のことだ。既に実践している学校もあり、子どもの参加意識や学ぶ意欲を引き出すのに効果があるという。新たな指導要領では各教科で、そうした能動的な学びの実現に向けて授業改善を促す、とした。

 「ゆとり教育」か「詰め込み教育」か。公教育をめぐっては長らく、そんな議論が繰り返されてきたが、時代は大きく変わりつつある。急速に進化する人工知能が人間の職業を奪うのではないかといった不安の声が聞かれるようになり、それを裏付ける未来予測も発表されている。

 従来のように教科書に書いてあることを覚えるだけでは人生を切り開くのは難しい。求められるのは、変化の激しい社会の中でも自ら課題を見つけ、多様な人々と協働しながら解決策を見つけていく力だろう。指導要領が「主体的・対話的で深い学び」を目指すこと自体に異論はない。

 ただ、心配なのは今の学校現場で実現できるのか、ということだ。ゆとり路線の転換以降、授業時間数は増え、時間割は飽和状態にある。今回の改定で、小学校では英語が教科となり、小学3~6年で授業が週1こま増える。英語以外にも、プログラミング教育の必修化などにも学校は対応を迫られる。

 授業時間の確保策について文科省は学校の裁量に委ねるとしている。各校は夏休みの短縮や短時間学習を組み合わせるなどして対応することになるが、詰め込み感は否めない。教員の多忙化がかねて指摘されているのに加え、学校現場では団塊の世代の退職に伴い、若い教員が増えている。「深い学び」を目指せば、これまで以上に教員は技量を求められ、授業準備や教材作りなどにも時間がかかろう。研修の充実も不可欠で、教員自身が自己研さんをする時間的な余裕が必要だ。

 中教審は答申で、新たな指導要領の内容を実現するため、教職員定数の充実などの環境整備を強く求めた。国は具体的な方策を示し、実現する責務があろう。

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