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GPS捜査 乱用防ぐルールが必要だ

 衛星利用測位システム(GPS)端末を利用した捜査は、徹底した秘密保持で進めるように―。警察庁が2006年に、こうした通達を都道府県警に出していたことが分かった。現在もこれに基づいて運用されており、人権やプライバシーの侵害などを招かないか危うさを感じる。

 通達は、GPSを使ったことを取り調べの中で容疑者に明かさないほか、捜査書類にも記載しないよう指示した。さらには、報道発表する際にもGPS捜査の実施を公にしない―としている。

 警察庁は、通達を出した理由として「具体的な捜査手段を推測させると、対抗手段を講じられかねないため」と説明する。確かに、捜査対象者の車にGPS端末を取り付けて追跡すれば、広い範囲での常時監視が可能になり、対象者を見失ったとしても追尾できる。事件捜査を進める上で有効なこの手法に、支障が生じることは避けたいというわけだろうか。

 とはいえ、捜査を開始してから終了するまでの記録の保管・管理も含め、全てが警察内部で秘密裏に処理されることには強い疑問を抱かざるを得ない。裁判所など外部のチェックが排除されるため、捜査が適法か違法かの判断もできないからだ。

 懸念されるのが、警察による恣意(しい)的な運用である。警察庁の運用要領では「犯罪の疑いや危険性が高いため速やかな摘発が求められ、他の捜査での追跡が困難」な場合に、任意の捜査でGPSの利用が可能になるとしている。だが、対象者をどう決めるかや、状況を判断するのは警察自身ということになる。

 警察庁はGPS捜査について、裁判所の令状を必要としない「任意捜査」と位置付けている。これに対し、日弁連などは「プライバシーを大きく侵害する恐れがあり、強制捜査に当たる。令状なしの捜査は憲法に反する」と主張する。裁判で争われるケースが相次ぎ、下級審の判断は分かれている。今春には、最高裁大法廷が初の統一判断を示す見通しで、その結果を注目したい。

 こうした中で千葉県警は昨年、全国で初めて裁判所の令状を取り、捜査対象者の車にGPS端末を取り付けた。捜査に支障がなくなった段階で、本人にGPS端末を使用したことを提示するなどの条件で請求したという。

 GPS捜査は効果的な手法ではあろうが、「乱用」に走れば警察による「監視社会」との批判も高まりかねない。令状を請求し、裁判所の判断を仰ぐことを基本に据えるなど、外部のチェックを入れるべきだろう。

 捜査の要件や手続きなどを定めた法律によって、使用に一定の歯止めを掛けることも大切だ。人権やプライバシーの保護と、有効な捜査の両立をいかに図っていくか。最高裁が示す統一判断を受け、議論を深めるよう求めたい。

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