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塚本監督映画「野火」岡山で公開 自然と人の対比で戦争の本質描く

「予算のめどが立たず当初はアニメ映画も考えた」と話す塚本監督=シネマ・クレール丸の内

映画「野火」の一場面

 独創的な作風で国内外で高い評価を得る塚本晋也監督(55)が、戦争小説の傑作を映画化した「野火」(原作・大岡昇平)が29日から岡山市北区丸の内、シネマ・クレール丸の内で上映される。公開を前に来岡した塚本監督は「これまでの映画人生を懸けたこん身の作品」とほとばしる思いを口にした。

 「実は、資金が集まらず父の遺産もつぎ込んだ。この映画は失敗が許されないんです…」。温和な語り口ながら、一言一言に強い決意がにじむ。

 物語の舞台は、第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。塚本監督自らが演じる主人公・田村ら日本兵が、炎熱の原野をさまよい歩く様子を描く。

 極彩色の花々、赤銅色の夕暮れ、青空をたゆたう雲…。すがすがしい大自然の風景映像と対比を成すようにスクリーンに映し出されるのは、飢えに苦しみ、敵におびえながら精神が崩壊していく日本兵の姿だ。「自然と人間の対比という撮り方は初めての挑戦。理屈じゃなく、戦争の本質を浮かび上がらせたかった」

 本格的に映画化を構想して20年余―。「政治家たちが戦争に向かって急速にかじを切っていると感じた。今の時代にぶつけないと」との強い危機感からメガホンを取った。資金難に陥ったが、「ほぼ自主制作」で世に送り出した。

 本作撮影後には「タクシードライバー」(1976年)などで知られる巨匠マーティン・スコセッシ監督の最新作「沈黙」(原作・遠藤周作、日本公開未定)に俳優として出演を果たした。「あこがれの映画人の作品だけに出演は本当にうれしかった。わが国の文豪の名作など『野火』とも共通点が多く、不思議な縁を感じた」と振り返る。

 「野火」は海外でも評価され、昨秋のベネチア国際映画祭コンペティション部門で招待上映。血なまぐさい戦場シーンをめぐり現地マスコミの評価は真っ二つに割れたという。

 「見た人のトラウマになるような作品を目指したので、ある意味狙い通りだった」と塚本監督。「戦後70年を迎え、戦争があまりに遠い存在になってしまっている。1人でも多くの人に見てもらい、戦争というものを疑似体験してほしい」

 出演は他にリリー・フランキー、中村達也ら。

 ◇

 つかもと・しんや 1960年生まれ、東京都出身。体が金属化していく男の恐怖を描いた「鉄男」(89年)で劇場映画デビュー。母と子の愛情をテーマにした「KOTOKO」は2011年のベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で最高賞。映画やテレビドラマの俳優としても活躍する。
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